気ままに趣味旅行

面白いコト「拡がる/拡げる」

森に眠る魚 角田光代

昨日、イリュージョニストという映画を観た後、無性に活字を消費したくなり、積読していた森に眠る魚を200項ほど読み終えた。

物語は1996年に始まる。子育てをする主婦の葛藤が細かく描かれていて思わず入り込んでしまっている。

テーマのひとつである、お受験には正直、全く興味がない。怖いし、気持ちの悪い人間の行くところだという強い偏見がある(ごめんなさい)。

日本人の宗教っぽい熱狂(周囲と足並みを揃えなければいけないという同調圧力、年齢に比して周囲と同程度に成長していないといけない・逆に抜きんでてもいけないという圧力)に関しても、のめり込んでしまえば、いつの間にか自分の人生を取られていた、ということになる可能性がある。自分はそうならないよう色々の選択をしてきた感があるからだ(それでも知らず知らずのうちに巻き込まれているものだけど)

また、お受験タイプの人間は紋切り型の課題解決を好む印象が強いので、そういった人間の量産にどうも共感できない。

 

そうは言うものの、読んでいてすごく面白い。

 

まず、1996年は自分が生まれて2~3歳の頃なので、物語に出てくる幼稚園に通う子供と自分を不思議と重ねたりして見えるところ。たぶん、角田光代さんは子供を等身大ではなく、見守る立場である母親の目線から描くことで、一種の象徴的存在として描くことに成功している。うまくいえないが、これまでのところ、物語中で子供は多くは語らない。まるで、人形や天使のような存在。見守っているのは母親の視点であるこちらだが、同時に母親も子供たちから守られている。

例えば母親は子供が中心の生活になっているわけだが、子供の未来を考えているように見えて、あるいは、子供の未来を考える結果、自分の接する環境にも気づかされて、自分の過去と深く向き合うことになる。となると、これまで表面的にしか接してこなかった人たちの間で根本的な部分で価値観が衝突して、対立が起こってくる(これまでに同類だと思っていた者が全く異なる存在だと明らかになる)。その各々の価値観が経済的あるいは社会的選択の結果を引き起こす。

それを救うのがまた子供なのだ(物語ではおそらくそのような役割になっている)。そういう役割を与えているところがうまい。(私は女性でも子育ての経験もなく推察するのみだが)現実的にもそういった場面が感じられる(と推察できる)ことから、共感できる。

 

つぎに、角田光代さんのよくやる手法だが、人間の生活の中に宗教的な営みを描いて、救いを求めていこうとする方法が随所に感じられる。

話は変わるが、「深い河」を読んだ際に、清廉潔白な人間よりも、美津子のような人間臭い人間(とでも言ったらいいのだろうか)の方が神様から好まれる、のような表現を思い出した(何も正確に覚えてねえじゃねえか笑)。

何が言いたくてこの話を持ち出したかというと、確かに世の中というところは実際は色々な人間がいて、雑多としており、お世辞にも美しいものとは思えない。分かりにくいからだ。深い河でいうなら、汎神論であるヒンドゥー教者の多いインドだ。あるいは日本もそうだ。

もっと分かりやすく表現すると、この日本が戦前のような一神教なら、みな同じ方向をみて、それを肯定する側からは、美しく思えたのかもしれない。つまり、雑多な色々を切り捨てして、まとまりを持って表現することの方が、美しいと思えるだろう。

お受験というのはつまるところ、言ってしまえば、神を求めれば救われる、キリスト教のようだ。お利口にしていること(神を信じて行動すること)が求められる。が、結果として現実問題では様々な衝突を引き起こす。人間は表面的には繋がれるが、実際その内面には様々な思惑が渦巻いているからだ。それに、神を信じれば安泰が確約されるというのは大きな誤解だ。人は熱狂の中にいれば、やがて合理的でいられなくなっていく。

これは多くの宗教が含むパラドックスの構造にも似ている。要するに、一神教多神教的に、多神教一神教的になりがちともいえる構造だ(話がさらに逸れるのと、どうせ上手く説明できないため割愛する)。

 

話を戻す。

この話の中でも様々な人が出てきて互いにまとまろうとする。彼らを結びつける要因は様々だが、やはり、この物語では主に子供たちだ。

そして、そのところどころに宗教的な表現が散らばっている。

例えば千花の目を通してみるかおりの部屋は、飾ってある絵も一々象徴的で、無駄がなく、洗練されていて自分の生活の理想を体現しているように思えるが、そこに住む住人かおり自身が幸せそうではない。

一方、瞳は分かりやすく宗教法人勤務の夫がいる設定で、自分も心の拠り所として、それらを表面的に利用していたが、そこで作った友人に過去の自分を投影して嫌気がさしてしまう。

繭子は子供のまま大人になったような人間で、計画性がなく、俗っぽい。けれど、それがかえって人の警戒心を容易に解き、可愛がられる。

等々…様々なタイプの主婦が出てくるが、そのどの考え方にも共感できるところがある(ように描かれてあるところがやっぱりすごいと思う)。そのため、ほとんどの読者はこの中から自分を見つけることができるのではないかと思う。その結果として、角田光代さんは、この作品を通して、多くの人の苦しみや葛藤を救うことを試みられているのではないだろうか。

 

また、話は前後するが、まず幼稚園自体が独特なワールド(宗教的意味合いを持った枠組み)になっているはず。角田光代さんの場合は日常社会の中を区切って、角田光代ワールドの舞台を出現させるのが非常にうまい。映画『8日目の蝉』(映画ですみません)を観た時も行き場のない主人公たちが、宗教施設で生活するようになる(のちに脱出する)。

それと同じで、この幼稚園も強い価値観を持った園長に惹かれて、人生に救いを求める母親たちが集まってくる。なので、おそらく、(角田光代さん的には)幼稚園に「足を踏み入れた時」から物語が本格的に始まっているのだろうと思う。

 

今後(200項以降)、彼女らの異なる価値観がお互いの選択を変えて、その結果、進む未来が大きく異なり、これまで作られた仲良しグループが崩れて(たぶんここが見どころ)、新たに違う人と連合しながら、登場人物たちは「正解はこれでよかったのだろうか」と迷いながら物語が展開していくのではないだろうか、と推察する。

そして、その中にそれぞれに見合った救いを求めて、三者三様に日常を受け入れていくのではないだろうか。と思う。楽しみです。

 

~(追記)読了後感想~

読み終わりました。大体、上記で予想していたような流れで進みました。

仲良しの彼女らの輪がボロボロと崩れ出したところは、非常に恐ろしく感じました。繭子とか容子とか後半なに?って思うくらい怖かった。けれど、彼女らが心理的に追い込まれていく過程の描かれ方はやはり迫真があった。

最終章の手前で主人公たちが「彼女」と統一して呼ばれるシーンがあります。その「彼女」は朦朧とする意識のまま、子供の首を絞めてしまいます。自分は、これは5人のうち誰のことだろうか、とか、これは誰かの幻覚なのだろうか?とか考えながら読み進めたが、結局その「彼女」が誰かは明かされないまま過ぎていきます。当然、この物語の主人公5人のうちの誰か、あるいは、その全員のことだろうと思いましたが、ひょっとして、あえて「彼女」と名前も顔も無くしたのは、「彼女」に世間の一般的な悩める母親を演じさせたからかもしれないと思い到り、寒気を感じました。

実際、あとがきで作家の朝比奈あすかさんが指摘されているように、この物語は以下の殺人事件を下書きにした可能性があるとのことでした。こんな事件があったなんて知りませんでした。。。

このウィキペディアの内容を読んでみると、この小説の内容の全てがこの実際の事件から始まっていると感じ寒気がしました。自分だったらどうすれば我が子を守っただろうと考えてみましたが、これを読んでどうすればいいか全く分からず、純粋に恐ろしくなりました。

ja.wikipedia.org

 

また、物語のラストは、『まだ不安もあるが、気を持ち直して再出発する』というような終わり方で、思ったより”救い”が弱いと感じました。最後まですっかりは晴れなかった。個人的にはもっと強く彼女らの未来を後押しして欲しかったです。それだけの苦労をしてきたのだから。それだけの深手を負ったのだから。

けれど、現実世界もそうだな、と思いました。いくら残酷な目にあっても日常は続いていく。

ただ個人的には、せめて物語の中だけでも…とはいきませんが、世の中の不幸な人たちが少しでも報われれば…と感じるような終わり方でした。面白かったです。

 

国民年金保険料はクレジットカード払いがお得なのか~イオンカードの場合

どうもhiroakiです。

今回は下の記事について読み、調べました。

本当に国民年金保険料はクレジットカード支払いをすると、お得なのか、まとめたいと思います。

www.smbc-card.com

 

私はイオンカード(クレジットカード)を持っているので、それで支払った場合と口座振替の場合とを比較していきたいと思います。

※ちなみに、現在2021年3月時点でのときめきポイント還元率は200円につき1ポイントです。

 

試算結果~

f:id:hiroakies4463:20210312151530j:plain

やっぱりクレジットカード払いの方が安そうですね?

ちりも積もればなんとやらなんで、早速、日本年金機構に申し込んでみようと思います。

 

日本年金機構申請書類取得ページ

https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kokunen/kokunen.html

書類を記入後、印刷して郵送すれば手続き完了です。

※前納には申し込み期限があります。お気をつけて。

 

イオングループ ポイントについて 補足

実は、先ほど紹介したときめきポイントには、デメリットがあります。それは1000ポイント以降からしか活用できない点です。

www.aeon.co.jp

なので、お住いの場所にもよりますが、税金等の支払いはWaonポイントの活用をおすすめいたします。

全国のミニストップでは、Waonポイントを税金等の支払いに当てることができます。すごいですよね。他のポイントではできないかと思います。

※蛇足ですが、現在、マイナンバーカード申請時に受け取ったマイナポイントをWaonポイントにつけると、最大7000ポイントを得ることができるので、それを税金支払いに当てたかった…というのが今回の私の作戦でした。ミニストップは現在、日本全国で1,999店舗しかないので、活用できない場合もあります。一部の県では、イオン店舗にて税金等支払いが可能な場合もあるようです。ある県は羨ましいです。笑

 

 

以上